四時間目が終わったら その一(全三話)
四時間目が終わったら
その一 「作文の書けない僕へ」
小学生の通信簿にて...
-国語:もう少しがんばりましょう-
大人になった今だから言える。
作文なんて簡単だ。
思ったことをただ書くだけなんだから。
でも、小学生・中学生の君は、
「うまく、上手に」を意識しすぎたのだ。
作文が大嫌いだったこともあるけど。
それ以前に問題がある。
本を読んでいない。
新聞、マンガ、雑誌もだ。
まず、人が書いた文章を読んでみよう。
何か感じる、
何か気づくはずだ。
「先生にほめられる」書き方、
そんなくだらないことはやめた方がいい。
一番書きたい瞬間に、
全力をそそぐのだ。
君の書いた運動会の作文を思い出してほしい。
おもしろくなかった。
もちろん、大人になった今読んでも。
何も朝始まって夕方終わる運動会を書けなんて
誰も言ってないぞ。
「運動会」と聞いて、
記憶に残っていることや、
連想することを書けばいい。
朝、かあちゃんが弁当を作っている。
海苔につつまれた三角のおにぎり。
かくし味のニンニクが香ばしいから揚げ。
厚焼き卵。
よだれの出そうな、すごく美味しい弁当の完成を、
台所でただ待っていた君。
「ひとつだけー!」と言って食べ、
「うまーい!!」と叫んだこと。
あぁ、早くお昼休みにならないかと、
始まりもしない運動会を想像する。
かあちゃんが台所で魔法のように料理をし、
真剣に手元を観て、
オレも作りたいとマジに考えた。
あの時書けなかった作文が、
大人になった今ならすらすら書ける。
題名は、「から揚げが一等賞」。
原稿用紙一枚でも苦だったのに、
今なら五枚は簡単に書ける。
作文に限らず、
人生ってそんなものだと思うよ。
<つづく>