コトリ工房 > 旅のお話 > 絵本をかかえてボローニャへ(イタリア) > 第4話 未来へ
なんとなく満足な気持ちで、ユースホステルに戻ると、わたしたちの部屋にもう一人の女性がはいっていた。
「あなたたちも、見本市にきたの?」
と英語のようなイタリア語のような言葉で話しかけられた。
そうだというと、彼女はイタリアの出版社の人で、今回の見本市でブースを出しているというのだ。
わたしが作品をもっているというと、ぜひ見せてというのでベッドの上に広げてで見てもらうことになった。
「ベッラ!ベッラ!(すばらしい)」といってくれた。
「これを売ってくれないか?自分の上司に見せたいから」って。
なんという展開。彼女の名前はフランチェスカ。
英語はほとんどしゃべれないけれど、ジェスチャーを交えながら話は盛り上がった。
絵本を気にいってくれたのはとてもうれしいけれど「これは原本で売ることはできない」ということを伝えたら、
あすもブースを出しているのでおいでよ!ということになった。
フランチェスカの働く出版社は、アート要素の強い大人っぽい絵本をいくつか出版していた。
あと子ども向きのアート解説本など。意外なところに縁は転がっているものだなと思った。
と、いうことで次の日も、見本市に一人でいくことにした。
今日は最終日なので、午前中にはすでにブースをたたんで帰り支度をしているところもあった。
すっかり会場はおひらきの、リラックスムード。
フランチェスカのブースを見つけ出した。
「作品を見せにきた」といったら、どうやらフランチェスカが絵本を見せたいと思っている上司は、今この会場にいないらしい。
フランチェスカも忙しそうなので、会社のe-mailを教えてもらい、後日作品のことをメールすることになった。
ちょっと残念だったけれど、しかたない。
最終日の会場は、初日に一人で来た時とはずいぶん違うものに見えた。
あの時は、いろんなことが高い壁に見えて、四方八方から跳ね返されている気がした。
自分が絵本を作りたいと思っていることさえ勘違いだったんじゃないかと思えるほどに。
今、こうして会場を歩いていると、自分の中から
「物語を作り出したい」「いつかからならず本を作る」「ここにある絵本にまけないものをきっと作れる」
という気持ちがあたたかい光のように広がってきた。
1日目で怖じ気づいて、しっぽをまいてここから逃げ出していたら、こんな気持ちにはなれなかったはずだ。
自分を成長させるのは、「もうダメだ」と思うほどの環境に一度は飛び込んでみることなんだと思う。
気心の知れたぬくぬくした場所は、たしかに安心で居心地がいいけれど、時にはそこをぬけだすことも必要なのでしょう。
目にみえる収穫はなかったものの、内面的には得るものが多かったボローニャへの旅。
いつかまた来よう、世界中の人に見せずにはいられないくらいの自信作をたずさえて。
おしまい
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